システム変更があったらしい [2/3]

システム変更の話から やや離れる.件の頁のことだけれど,何か いろいろおかしな事が書いてあるなぁ.納得の行くのは「(4) 価格上限の引き上げ」の「8/16追記」にある

いずれにせよ、現在のしくみだと、事実上議席の50%以上を予測できないことになってしまう。

の箇所だけだ.株価上限を5ptよりも高く設定しなくてはならない理由は ひとえに これ.

さて,

現時点では、主要政党の時価総額が上限にはりついており、あまりinformativeな状況とはいえない

のはその通りだろう.ただ,これを「バブル」だと見做すのは どうかしら,という気もする.そもそも

現在の価格は、明らかに仮想株式の供給が需要に対して少なすぎることを示している。

とか

バブルの原因は、供給が少ないために、各政党の支持層が株式を買い持ちしているからと思われる。

の箇所からして どうもおかしい.現在 自民・民主の株価が5.00で頭打ちになっているのは,決して株式の供給が少ないからなどではない.何故って,

  • 例えば8/13にも書いたように,株主が特定政党の株を5.00で売らずに抱え込んでおくメリットがあるのは,5pt/株以上の配当が見込める場合──言い換えれば その政党が単独過半数を獲得する場合──だけだ.で,実際,今現在 自民や民主の株を5pt/株で売り抜けずに抱え込んでいる株主たちのうち,「今回自民/民主は過半数取れる」という予測のもとに持ち株を抱え込んでいる人が何%いるか? そういう人たちがもしいるとするなら,彼らは単に配当を受け取るまで売らずに持っていた方が儲けになると思っているから売らずにいるだけで,そういうのをこの頁で謂う所の「市場操縦者」とは呼ばない.
  • また,これは総選挙はてなに限らず はてなアイデア全般について そうだけれども,株価決定は最新の取り引き時の売り値だけで決まる.売りに出ている株が何株あり 買い注文が何株入っているか,といった事とは全く関係なく,最後の取り引き高が僅か10株だろうが,その後 丸1週間「出来ず」の状態が続こうが,3.5pt/株で取り引きされた銘柄は株価3.5である.こういうシステムの下では,単一銘柄の株を独占/寡占でもしない限り「市場操縦者」は存在し得ない*1先の頁で強調している所の「市場の流動性」は株価決定に殆ど何の影響ももたらさない.

この辺,8/13に書いた日記trackbackを下さったsugioさんの仰るように 単に株主たちがゲームのルールをよく分かっておらず*2,「今売っておかないと損をする」ということに気付いていないだけだと見たほうが 余程自然な気がする.或いは,単に「私はこの政党を支持する」という意思表示の意味で 採算など初めから度外視して買っているとか*3

大体,そうでなかったら 8/13にも書いたように 例えば社民党あたりは株が売れ残るのが寧ろ当然だろう.どう考えても社民が全議席の10%を取れるとは思い難いから.その辺を計算ずくの上で,株式公開が始まって間もない頃に敢えて社民の株を買い込んだ人たちが おそらくいただろうが,そうした人たちも まさか社民の株が1万株も売れてしまうとは思っていなかったのではないか.

ふた昔くらい前から 経済畑の人たちの間でもゲーム理論みたいなのが流行で,ああいうのを齧った人というのは えてして「各個体は各々の利得を最大にする戦略を常に選ぶ」というのを何やら自明の理のように考えがちのようだが,その前に「こいつら,ルール読んでないだろ」と疑ってみようとはしないのだろうか.私も含めて,はてなユーザーというのは ひょっとすると ものすごく買いかぶられているのかも知れない.

*1:…というより,「誰でも市場操作が出来てしまう」と言った方が正確かも.

*2:今まではてなアイデアを使ったことが無く,今回の総選挙はてなで初めて株を買った,という人も多いようだし.

*3:特に,普段はてなアイデアを使っていない人にとっては 初期ポイント1000ptは捨てても惜しくないわけだし.