「体細胞クローンと受精卵クローンの違い」について知りたがっている人はそんなに多いのか?
そのうち「日曜版」で使おうかと思ってチャチャッと書いておいたままお蔵入りしている絵があるので,それを使って かいつまんで説明してみるぞ
受精卵クローン
- 受精卵を用意して培養して,
- ある程度細胞分裂が進んだところ*1で
- それをばらばらにします
- 別途調達して来た卵子*2から
- 核を取り除いたのを たくさん作っておいて,
- それぞれを さっき(3)で作ったばらばらのやつ1個ずつと細胞融合させます
これで要は(1)の受精卵のコピーをたくさん作ったことになります
これは要するに「同じ遺伝子型を持った個体を大量生産」するのに使う方法だな.「乳の出の良い牛をいっぺんに殖やそう」とか,そんなの.
ただ,(1)の受精卵がどんな形質かというのは,たとえ父親と母親の遺伝子型が完全に分かっていたとしても制御し切れるものではない*3から,「コレよさげだから殖やそう」「コレは使えなそうだからボツ」というのをどうやって判定するかが問題.
以下は私の想像だけれども
(3)でばらばらにしたヤツを冷凍保存でもしておいて,試しに1個だけ(6)まで作って育ててみて,気に入ったら量産する
とかやるのかな.試しに作ってみたやつが ちゃんと牛なら牛として生まれて育つまでやってやらないと「採用/ボツ」判定が出来ないのか.すっごい手間だなぁ.
体細胞クローン
これを培養して母体に戻して赤ちゃんまで育ててやれば,あなたのコピーが出来上がります
こっちのほうは量産が目的ではなくて,「既存の個体そっくりのコピー作り」が出来ますよ,というのが売りなのね.受精卵クローンと違って 最初から「これを育てたらどういう個体になるか」が分かっているという意味では安心だな.
備考 & 単なる思いつき
- 上では「培養してやると」とか簡単に言っているけれども,これは実際にはとても大変な作業らしい.核なし卵子によそから持って来た核を入れてやって「体裁だけは一応受精卵っぽいもの」を作ってやっても,それだけでは細胞分裂が始まってくれないのだそうだ.そこのところで「スイッチを入れてやる」為に,薬品を使ったり電気刺戟を与えたりと いろいろ工夫を凝らすらしい.「針でつつく」なんていうのもあったような気が.
- 核移植とか細胞融合の時に免疫系はどうしているのだろう.これは私もよく知らぬ.
- 遺伝子といえば「核にあるもの」と思っている人が多いと思うけれども,実は核以外にミトコンドリアにもある.さっきの「あなたのコピー」の場合だと,核が持っている遺伝子はあなたそっくりだけれども,ミトコンドリアにある遺伝子のほうは (4)の卵子を提供した人のと同じ*6.ソウル大調査委がウソツク細胞のDNA鑑定をやったとき 核とミトコンドリアの両方を調べていたのは そのせい.
- 体細胞クローンの(5)まで行ったやつを 受精卵クローンの(1)以下と同じ方法で殖やしてやったら あなたのコピーがいっぺんに何十人も… ホント?