はてなアイデアが予測市場として正常に機能しない理由は何処にあるか

8/23にちょっと触れたのは「あれは何を予測したことになるのだろう」という話だったのだけれども,それとは別に「その予測はうまく行っているのか」という疑問が残っている.

こんなに株価操作の容易な「予測市場」に何の意味がある?

ある案の株を 5pt/株以上(時として30pt/株にも達する)という法外な値で買い込むことによって株価を吊り上げるという行動が,その案をスタッフの目にとまり易くさせ,結果としてその案の実装およびそれに伴う投資の回収を早めるということが しばしばある().

そういう場合,取引終了時の株価は実際の配当に比べて遥かに大きな値を指しているのが普通.

参加者は各々自らの利得*1を最大にすべく行動する

というのが 参加者が取引を行う上での ほぼ唯一の原則だけれども,その行動が結果として却って予測値を狂わせていることになる.こういう事が実際に起こっている以上,現行のはてなアイデア予測市場としてうまく動作しているとは謂い難い.

株価決定には重心を取れ

idea:4633というのが 8/3に出されて,8/11に実装済になっているのだけれど,ここでのはてなの解法は

「最近30分間に行われた取引の総ポイント数 / 総株式数」という算出方法に変更しました。

というもの.移動平均の一種だな.
同案のコメント欄を読んでみると,はてなのスタッフ側も こうも簡単に株価吊り上げが行われている現状が望ましくないことは自覚している模様.だが,上の解法が株価吊り上げ対策にどれだけ寄与したかは,アイデア一覧を見れば一目瞭然.

ここで,「移動平均を取る際の30分という窓幅が狭すぎるのでは」というのは おそらく誰もが思うだろう.これをせめて1日くらいに伸ばしたらどうか,とか.しかし私にはこれが本質的な解決策になりそうには思えない.

現行の株価決定メカニズムの本質的な不備は何処にあるか.明らかに,株主が売らずに抱え込んでいる株が 株価決定に何の影響力をも持たないという点にある.

では,安易な株価操作を行えなくするには どうしたら良いか.答えは簡単で,例えば 株が売買される毎に

V' = \frac{n}{N}v + \frac{N-n}{N}V

とでもすればよい.ここで

N ...これまで市場に出回っている株式総数
n ...今回売買された株式数
V ...これまでの株価
v ...今回株が売買された価格
V' ...更新後の株価.

例えば,ある案の株が1000株出回っていて,これまで株価が2pt/株だったとする.この株に買い手が付いて,500株が3pt/株で買われ,残り500株の株主は株を手離さなかった場合,株価は2.5pt/株までしか上昇しないということ.要するに株全体の価格の重心を求めるわけ.

これだと,上場(=1000株到達)直後に 10株が10pt/株で売られたとしても,株価は

\frac{10}{1000}\times 10 + \frac{990}{1000}\times 1 = 1.09

となり,株価変動は1割にも満たない.

その前に,

冒頭で触れたように,損得を度外視して高値で買うことによる株価の吊り上げも,元はといえば ひとえにその案をスタッフの目にとまり易くする目的で行われているわけだ.身も蓋も無い言い方だが.スタッフが案を検討する際に評価額の高い案にばかり気を取られないよう努めれば,現行の株価決定プロセスの妥当性如何なぞ論じるまでも無く こういう奇妙な慣習は早晩止む.

*1:所謂「利他行動」ははてなアイデア上でも起こり得るが,ここではその辺まで考えなくてよいだろう.