そういえば去年の流行語大賞って何だったのだっけ

idea:6191というのが 昨日出ていた.前からポツポツ出始めている「ポスト総選挙はてな」の一アイデアなのだが,私は買わない.

2値モデルのつまらなさ

およそ予測モデルというものは,それが予測である以上 最終的に予測がうまく出来たかどうかの評価が必要になるわけで,\Lambdaを銘柄全体,Pを株価なり評価額なりの分布の真値,P'をその予測値とすれば,例えば  \sum_{\lambda\in\Lambda}|P_{\lambda} - P'_{\lambda}|^2 のように平均自乗誤差でも取ってやるといったような 何らかの評価函数が必要.

ところで「流行語大賞」モデルの場合,候補が幾つあるかに依らず,大賞に選ばれるのは1つなので,各大賞候補は結果発表時には「当たり/外れ」の2値しか取れない.どれか1つが「当たり」で あとは全て「外れ」.その「当たり」の株が配当を独占し,あとは価値0になる.

こういうモデルに於いて予測が最もうまく行ったというのはどういう状態を指すかといえば,当然 その「当たり」に買い手が殺到して 他は見向きもされない,という状態を指す.そういうモデルでは,予測精度とは要するに「当たり」銘柄の株が株価総額の何%を占めたかで測るだけのものになってしまう.

総選挙はてなの場合だと,例えば自民なら自民の株主が「自民は現時点での予測値ほどたくさんの議席は取れないだろう」と判断すれば株を売りに出す,といった事が起きる*1わけだけれども,上の「流行語大賞」モデルの場合は「当たり」銘柄はあくまで「当たり」であって,株主は手持ちの銘柄が全配当を独占すると思えばこそ株を手放さずにいるわけだから,中途半端な値段で売りに出す理由が無い.

ところで,ポスト総選挙はてな案としては 他にもidea:6121というのがあって,そこで私は上述の点を指摘しておいたのだけれども,そこに付いたコメントが言うように例えば「1位には配当の50%を,2位には30%を,3位には10%を,…」といったように配当の独占を避ける方法も無くはない.ただ,そうやって配当の分配の仕方が予め固定されているモデル(つまり前述のPが非常に狭いクラスに限定されているモデル)というのは,最終的な予測結果が十分な精度を持たなかった場合に「それが取り引きのルールの設定の仕方がまずかったせいなのか,それとも配当の分配の比率がまずかったせいなのか」を特定できないという点が致命的に弱い.

配当総額をどう設定するのか

実を言うと,idea:6191に関して私が最初に懐いた疑問は 上述のような2値モデルゆえのつまらなさではなく,取り引き開始後に「大賞候補に『○○』も加えてほしい」みたいなのが殺到したら対応しきれるのか,という点.

私は当初は「総選挙はてなに於ける国民新党の扱いと同様に,新たに候補に加える語については はてなアイデアで随時募集する」という形式を想定していたのだが,idea:6191にその後寄せられた発案者自身によるコメントを読んでみた限りでは,どうも発案者は「ユーザーが候補作品をノミネートできる」点を寧ろ売りにしているようにさえ見える.或いはスタッフによる登録を経ずにユーザが勝手に候補を増やせる方式*2を考えているのかも知れない.

いずれにせよ,その場合,総選挙はてなのルール改定後のように「新株が売れるたびに配当総額を増やす」という方式を取るのは危険だ.何故なら,既に有力候補の株を保有している株主にとっては,ダミーの候補を手当たり次第に登録して配当総額を吊り上げれば 現有の株によって最終的に得られる配当が増えるわけだから.この辺をどう調整するつもりなのかが,idea:6191のコメントを読んでみただけでは よく分からない.

*1:どういうわけか実際には売り注文が非常に少なく見えたけれども.

*2:総選挙はてなに於ける雑民党みたいに.:p